罹患、Dancing in the Moonlight

8月のある日、なんだか身体が重たいなぁ、という感覚が頭の隅っこに燻っているのを認識してはいた。だが、猛暑なのだから当然だろうと思い、特に気に留めなかった。

午後、喉に何かが張り付いているような感じ。塩でうがいをした。そうすることで、今まで大抵は風邪をひかずに済んできたから。

日が暮れる頃、身体の節々に違和感。今思えばそれは完全に熱の前兆だったのだが、なにしろ風邪なんて数年ひいてなかったので、油断していた。数日前に夫が体調を崩していたので、もしかすると染ったかなくらいに軽く考えていた。夫は、PCR検査を違う場所で2度受け、陰性だった。

その夜から3日間、39度前後の熱が出た。体温を上げよ、という脳からの指令に忠実に従い、筋肉を震わせ熱を発生させ、病原菌との戦闘態勢に入っているな。免疫システムが正常に作動している、よーし、その調子だ。他人事みたいに呑気に構えていた。

頻繁に高熱を出していた子供の頃の、空間が歪むような奇妙な感覚が蘇った3日目の晩、念のためにと夫が買ってきたセルフテストキットの抗原検査をした。陽性だった。一番驚いたのは私自身。ついでに夫もテストをしたら、なんと陽性だった。彼は2度のPCR検査で陰性だったのに。誰かにうつしてしまったかもしれないと考えたら、血の気が引く音が聞こえるようだった。昔の少女漫画で顔に縦線が入る、あの感じ。

それにしても謎なのは、感染経路。いまだに人混みはできるだけ避け、治安悪化のせいもあって公共交通機関は一切利用していない。体調を崩す数日前は、仕事でほぼ家に籠る日々だった。CDCによると、15〜20分以上密室内で人と接しない限り、罹患する確率は極めて低い。

夫が体調を崩す前の彼の行動を分析した。すると、その週始めに他社の小部屋で4名で1時間ほど打ち合わせをしている。おそらく、その会議で夫が罹患した線が濃厚とみているが、コロナ前の生活が定着した今、感染経路を断定するのは難しい。

喘息持ちの夫が無事で何よりであった。熱も出ず、私よりも全然軽い風邪の症状で済んだ。私の場合は、怠さ→悪寒→喉の違和感→発熱→咳・鼻詰まり・味覚障害。コロナの症状および風邪薬の箱の裏に書いてある風邪の諸症状を隈なくカバーした見本のような症状であった。

食欲は、熱が下がり始めた4日目から徐々に戻った。それまではアイスクリームやゼリー、ミルクシェイクを口にしていた。うなぎでも食べたら回復が早まるだろうかと考えたが、うなぎの味を想像したら、それはあんまりいいアイデアではなかった。

5日目に、味覚がなくなった。寄せては返す波のように味覚が戻ったり無くなったりした。試しに香りも味も濃いコーヒーを口にしてみた。鼻詰まりなので当然香りはなかったが、ごく僅かに苦味があったような気がした。気がした、というのは、それが記憶から生じた味覚なのか、実際の味覚なのか曖昧だから。

個人的な結論。コロナはタチの悪い風邪。ただ、少しでも疑われる症状がある時は外出せず、1度や2度陰性だったとしても、何度かテストを受けることをおすすめする。

<本日の1曲>

Toploader – Dancing in the Moonlight

闘病中、ゴロゴロしてばかりにいい加減飽きて、この曲のオリジナルを聴きたくて検索したら、このビデオが最初のほうに出てきた。

クラブには、けっきょく1度も足を運ぶことなく青春の幕を閉じた。だが、サンフランシスコでの学生時代、友達の友達とか、アートサプライショップとか古着屋とかカフェで声をかけられた人々、なんとなく気が合うことはお互いに知っているけど、街のどこかそのへんで会ったら挨拶するだけみたいな人から誘われて、誰かの家で開かれるパーティになら、たまに顔を出していた。そういうパーティは、インビテーションはなく、人づてに聞いてなんとなく集まる。お酒とかドラッグが目的ではなく、音楽と、その時々の面子が醸し出す空気を楽しむことが主目的の集まり。まさにこのミュージックビデオそのものだった。(ビールやワインが用意されてたり、それからマリファナ入りのタバコだとか、MDMAだとかまわってきたりするパーティも、そりゃもちろんありましたよ。)

ところで、このバンドの歌い手のアクセントが変なので調べたら、イギリス人。なるほど、イギリス人がアメリカ英語を真似るとこんな感じなのか。妙に巻き舌での発音を意識しているところとか、Aが母音の単語の響きとか、とにかく全体的になんか違うのだ。会社勤め時代、イギリスのブライトンからニューヨークに駐在で来ていたSethと一緒に仕事をしていた時、イギリスに残る彼のチームとよくやりとりしていた。ふざけて時折イギリス発音を真似て見せたら、とてもウケていた。彼らにとっては、やっぱりこんなふうに不自然に聞こえて、愉快だったのだろう。イギリス英語はアメリカ英語に比べてセンテンスが簡潔に纏められていて、モダンで洗練されている。同じ意味を擁する表現でも、言葉の選択から違っている。それはアメリカ人の表現よりも腑に堕ちて、イギリス英語が好きになった。最初の頃は聞き取りづらかったけど、聞き慣れると、アメリカ英語よりもイギリス英語の方がずっと聞き取りやすい。日本語が母国語の耳には、イギリス英語の方が聞き取りやすいのかもしれない。

寄り添って介抱してくれた猫たち。目覚めるたびにこんなビジュアルが目の前にあったり、猫たちのイビキが聞こえたりしただけで癒された

4 Replies to “罹患、Dancing in the Moonlight”

  1. 罹患されましたか。もはや私の周囲には、ほとんど感染経験のない人はいなくなりました。無症状もあれば高熱が続くこともあり、辛かったにしてもご家族も含めて回復されてよかったです。
    私は訛りを聞き分けるほど英語はできませんが、英語と言えばずっとイギリス英語(とオーストラリア英語)だったので、アメリカ英語が聞き取れずに困ることがよくありました。米語より英語の方が確かに日本語の音に近いのかもしれませんね。

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    1. コメントありがとうございます。
      街角にはいまだにスターバックス並みにPCRテストのテントが目立ちますが、ニューヨークの公共交通機関でのマスク着用も任意になり、コロナは脅威ではない空気がすっかり定着しました。不謹慎なのかもしれませんが、そんな頃に感染し、いまさら感というか出遅れ感、時代の波に乗り遅れたような気がした自分の感情の動きが可笑しかったです。
      日本に大型台風が来ることがニューヨークタイムズで大きく取り上げられていました。早く通り過ぎればいいですね。

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  2. 地震も台風もマスクもない場所から、全部ありの場所に移動して、毎週のように気にする生活となりました。とは言え、悪いことばかりでもなく、多くの人が気持ちの上でも備えがあるのに安心します。ただ、どこかのお医者さんが「日本はまだPCR検査をしっかりしてるから感染者数が多いのだ」と言っているのは、あまりに不見識ですね。外を見ようとしない文化は健在です。
    「スターバックス並み」にちょっと笑いました。フランスにはほとんどスターバックスがないのです。every street cornerのお店と言えばパン屋さんでしょうか。久しぶりに北米を訪ねたくなりました。

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    1. 備えがあるので安心、で思い出したのは、日本の台風についてのニューヨークタイムズの記事に載っていた、コンビニの店先に砂袋のようなものがキッチリ丁寧に積まれている写真。
      スタバは以前に比べると店舗数が減りました。私もBlue Bottleがオープンしてからは全く寄り付かなくなりました。

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