久々にNina Simoneを聴いていたら、映画Before Sunsetのことを思い出した。この映画に彼女の歌声が流れる印象的なシーンがある。前編Before Sunriseと完結編Before Midnight のトリロジーの1部だ。前編ではジュリー・デルピーとイーサン・ホーク演ずる主人公の旅先での出会いを、続編では9年後が描かれている。ストーリーについては、まだ観ておられない方のために、ウッディ・アレンの映画に通ずる映画とだけ記しておく。映画全体に散りばめられた美しいパリの街並みが、旅行をするのが難しい今は特に心にしみる。
この映画を観たのは、公開からかなりの年月を経てからだった。なぜかというと、前編での成り行きから、その後どうなったのか知らぬまま余韻を残しておきかったのと、イーサン・ホークをあまり好きではなかったのとで、映画館に足を運ばなかったから。だがある日ふと気になって、気まぐれでDVDを取り寄せた。蓋を開けてみたら、この映画の中のイーサンが、しばらく見ないうちに、枯れた感じの渋い大人の男になっていて好感を持った。ストーリーも、どうなるのか最後の方まで予想がつかず大満足。
男性は、キッチリ隙のないおしゃれをし過ぎていたり、イケイケのギラギラ感満載で見ているだけで疲れを覚えるような、ひと昔まえのWall Street界隈でよく見かけたAmerican Psycho の主人公とその仲間たちのような(“人生における最大の関心事は、誰よりも素晴らしい紙質と字体の名刺を持つこと”… ! というのは、あくまで映画の中の人物描写であり、完全なるフィクション)タイプの人よりも、どことなく枯れた感じの、髭と頭髪に白髪がチラホラと見え隠れし、控えめで落ち着いていて、奥行きのある雰囲気を醸し出すひとが魅力的だ。Thom YorkeやLiam Neeson、坂本龍一など、その好例といえよう。
完結編Before Midnightは観ていない。いつかどうしても気になって観る可能性はなきにしもあらずだが、いまのところまだその気はない。物事には、宙に浮かせたままにしておくのがいいことだってあるのだ。
<Before Sunrise予告編>
前編の結末および物語全体のネタバレになるので、続編と完結編トレイラーは載せません。
【要注意】この映画をこれから見るつもりでいる方は、ここから先は見ないでね。
<Before Sunsetの1番好きなシーン>