青い鳥

チルチルとミチル兄妹が、クリスマス・イブにみた夢の中で妖精に導かれ、青い鳥探しの旅に出る物語『青い鳥』は、ベルギーの詩人・劇作家モーリス・メーテルリンク によって紡ぎ出された。1908年に発表され、1911年にノーベル文学賞受賞。時代を超えて親しまれる世界的名作だ。

夢で青い鳥を探すも見つからず、目覚めてみると自宅の籠のなかにいた、というオチは、「幸せはそう簡単には見つからないよ。でも本当はごく身近なところにあるんだよ」というメッセージを伝えている

引用元:文芸社ウェブサイト ブログ『童話を甘く見てはいけない』

というのが一般的に浸透しているこの物語のテーマだ。筆者もそう信じてきた。原作である戯曲の訳を読むまでは。

実はこのストーリーの主題は、生と死であり、そのことは多くの研究者によって語られてきた。メーテルリンクは青い鳥という物語全体を通し、生と死の意味について読者に向かって問いかけている、というのが本来のテーマなのだそうだ。大変興味深い。だが、メーテルリンク本人がそのように記録に残していたのではない限り、本は読者それぞれが抱いた印象のままにしておくのも、ロマンがあっていいのではないかと個人的には思っている。

この世のからくり

筆者が生と死について意識しはじめたのは17か18歳頃。それは自分の生い立ちや行く末について考え始めたころであり、稲垣足穂の世界に触れ、刹那的なものに美を見出していた頃でもあった。あれから、ずいぶん遠くまで来た。人生を積み重ねるなかで、いつの頃からか、そう確信するようになった「この世のからくり」みたいなものがある。それは至ってシンプル。愉しむこと、感謝すること。なぁんだ、そんなことか。とっくの昔からわかっているよ。だけど・でも・だってこんな環境でいつもいつも楽しんだり感謝したりなんて、できっこないよ。という無意識の声には耳を貸さず、毎日ひとつだけでもいいから、たのしんで、感謝すること。生きている意味があるとするなら、それが答え。たのしくないことなんて何一つしてはいけない。たのしくないということは、それはあなたの人生には必要のない物事、ひと、仕事だということなのです。

コロナ禍で夫が在宅勤務になり早1年。当初は夫が一日中家にいるのが嬉しくて、3食料理することを楽しんでいた。それが2ヶ月くらい経つと、さすがに毎日はキツく感じるようになった。今では、必要とあらば連日でもテイクアウトなど外食に頼り、無理せず、楽しくない気分にならないようバランスを取ることにすっかり慣れた。それに、筆者ひとりなら、夕方はシャンペンかプロセッコ、アップルサイダーなどを飲みながらサラダやチーズなど軽いつまみで終わらせるところを、夫がいるのでテイクアウトなり自炊なり必ず食事を整えるのは、夫のおかげで自分自身の健康を保てているということに他ならないわけで、彼に感謝なのである。

死については、上手く説明できない。だが今までの経験を総合すると、未来と現在と過去が異次元で同時に存在するという説があるように、どうやら生と死も異次元で同時に存在しているのではないかと思う。そう思うに至った今までの経験については、クレイジーだとか嘘つき呼ばわりされるので、ここでは触れない。

滅多に風邪も引かず、コロナにも負けず、こうして今も生きていられるのは、祖母が毎日ご飯を作って大切に育ててくれたおかげ。そのことに思いを馳せていたら、子供の頃、よく頬ずりした祖母の手のことを思い出した。たくさん小皺のよった、ツヤツヤの懐しい手。

筆者が20代前半で他界した祖母には、夢の中で何度か再会した。彼女に会うのはいつも同じ場面で、言葉もなく、ただ一緒にバスに乗っている。彼女が祖父と一緒に眠る墓地へと続く長い坂道(横浜の清水ヶ丘高校へ向かう坂道でもある)のふもとで祖母だけが1人下車したところで、夢が終わる。子供の頃、よく祖母と連れ立って祖父のお墓参りに行った。その坂道のふもとにあるお花屋さんで菊の花束とお線香を、向かいのスーパーマーケットでお供え物を買い込んだ。祖母に会う夢を見る時は必ず、なにかしら思い悩んでいたり、なんらかのストレスに晒されている時だった。あるいは、その夢を見てはじめて悩みやストレスに気づくのだった。

最後に祖母の夢を見たのは、いつだったろうか。思い出せないほど、彼女に会う夢を見なくなり久しい。寂しいが、それはたぶん、私にとっていいことなのだろう。

ところでメーテルリンク自身は、生と死の意味について、結論に達することは出来たのだろうか。

あちら側の世界に行ったら、祖母や猫たちを訪ねたあと、メーテルリンクにも会いに行こう。

<本日の1曲>

Ben E. King – Stand by Me

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