世界は新型風邪ウィルスのことで騒々しさが増している。私が暮らす街マンハッタンでも、初の感染者が確認された。それでもわたしは、これまでどおりKeep Calm Carry On。騒いだところで、状況は好転しない。どこかの国や街では、トイレットペーパーやマスクなどを爆買いしたり、ひどい例ではマスクを高値で転売する人がいるらしい。そんな人間の心理のほうが、ウィルスなんかよりよっぽど怖い。こんなときにも自分の利益のことしか考えられないなんて。周りの人がバタバタと病に倒れる世界で、自分だけ生き残って、いったいどうするつもりなのだろう。だれもいなくなった世界でお金なんてなんの役にもたたなくなる。一人ぼっちで生き残って楽しいはずがない。
Center for Disease Controlや市が発信する情報に基づいて冷静に状況を観察していたら、コロナウィルスはパニックに陥るような疫病ではないことが明白だ。
コロナウィルス蔓延が広がったことで、わたしがとった普段と違う行動といえば 、万が一街が閉鎖された場合に備え、猫のごはんやトイレ砂を余分にオーダーしたことと、2週間分程度の食料や生活必需品をストックすべく、買い物のたびに缶詰やパスタ類、洗剤などを少しずつ買い足していることくらい。食べたことのない缶詰にトライできるのが楽しみだ。引きこもり生活になったら、気になっていた映画や本を観たり読んだりできる時間ができていい。
この際なので、以前から気になっていたが後回しにしていた、緊急避難時に持ちだすバッグの用意にもとりかかる。夫と二人分の必要最低限の着替え一式など、機内持ち込みサイズの小さなスーツケースひとつに全ておさまるように試行錯誤するのは、意外にも楽しい作業であった。小さいものだからと、つい靴下2足づつ入れていたのを1足に減らしたり。我が家には、夫と私とで一匹ずつ抱え歩くことになる大切な猫2匹がいる。そのために荷物は出来るだけ軽量でなくてはならない。猫にも人間にも出来る限り負担の軽く済みそうな猫のキャリアをリサーチし、いくつか候補を決めた。一番の候補はバックパック型のキャリア。背中ではなく、前側に担ぐ。背中に担ぐと、万が一バッグが壊れて逃げた猫を追いかけるのに間に合わない。マンハッタンのような騒々しい街ではあっというまに車に跳ねられてしまうだろう。そんな場面を想像しただけで背中に冷水を浴びせられたような感覚が襲う。それから、アマゾンでみつけたNecoichiというブランドの折りたためる猫のテントと簡易トイレがセットになったのも、ほしい。どなたか、猫をかかえて走ることもできるオススメのキャリアをご存知でしたら教えてください!


マスクは入手していない。マスクがひとつ手元にあっても困りはしない。しかし、マスクが品薄な今、 必要としない私が無闇にひとつ買うことにより、本当に必要としている医療従事者や感染者の手に渡らなくなるという悪循環を生み出すことは避けたい。
マンハッタンで最初の感染者とみられる女性は、軽い風邪の症状のみ。よって、自宅隔離・療養している。ワシントン州で感染した高校生男子も同じく、軽い風邪の症状のみで自宅療養し、すでに回復したという。いままで死に至った感染者の特徴は、元々疾患のあった年配の方々。健康に問題のなかった感染者が発症するのは軽い風邪の症状のみで、じきに回復するケースがほとんどらしい。大切なのは、ウィルスをこれ以上広めぬよう、各自手洗いをしっかり行い、避けられる人混みは避ける。人混みを避けねばならない一番の理由は、なんの症状も出ていない無自覚な感染者がむやみに動き回ることによって感染が広まるのを阻止することにある。
アメリカの疫病専門家達の報告によると、コロナウィルスは現在までにかれこれ6週間ほど米国内で既に蔓延していたらしい。この1週間以内に出たアメリカ国内の死者2名の持っていたウィルス、アメリカ国内感染者数十名の持つウィルスおよび中国から提供されたウィルスのサンプル、さらに、一人一人の感染経緯情報に基づいた研究結果による見解の信憑性は、極めて高いのではないだろうか。
ウィルスが6週間ものあいだ出回っていたにもかかわらず感染者率が低いのは、アメリカの住宅事情と車社会という物理・文化的な理由が大きいからではないかと思う。マンハッタンの住宅事情は例外として、集合住宅も含めアメリカ国内の建築物は全体的に大きく広々とした造り。そのため、他国に比べると人々の物理的な距離に余裕がある。アメリカ人はハグなど頻繁に行う文化にみられているが、実際には、身体的な接触が頻繁に行われるのは身内や親友同士など、極親しい間柄に限られる。会社や学校など普段の生活上で、例えば相手の肩をとんとんと叩き声をかけるようなことはない。職場でちょっとでも人と接触すると、場合によってはセクハラとみなされることもあり、社会人の常識では、他人同士が触れ合うことは滅多にないのが実情だ。また、アメリカではついこの間までコロナウィルス検査はCDCのみが行い、各地の病院が検査を行えなかった。そのため、実際には遥かに多数の感染者が存在する可能性がある。感染したワシントン州の高校生の例では、当初インフルエンザの検査ついでに病院側がコロナウィルス検査も行ってみたところ、陽性が発覚したという棚ぼた的流れは、まるでコメディー。当人はコロナウィルス検査が行われたことさえ知らされていなかったという。私はもう何年も風邪をひいていないので、今風邪をひいたらコロナかインフルエンザの疑いを持つであろうが、普段からよく風邪をひく人々は、いつも通りただの風邪だと思っていたが実は….. というケースもあるだろう。なんの風邪か知らないほうが精神衛生上はいいのかもしれない。
これだけ騒ぎ立てる世の中に生きていると、自分でも気づかぬうちに勢いに流されてしまい、人と接することが怖くなったりする。今朝、2週間ぶりにバレエスタジオに行こうと思っていたけど、ニュースをちらりと見たら外出するのに気が重くなり、取りやめた。仕事の連絡事項など済ませ、気分転換にすこし掃除したあと、Ellis Reginaが歌う大好きな曲『3月の雨』を久々に聴いて気分が上がる。みなさまにも私にとってのこの曲みたいなお守りがありますように。この暗い季節をそうやって乗り切りましょう。
Ellis Regina & Tom Jobim- Águas De Março
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