Catskills 憧れの山小屋暮らし

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Catskills Mountains

今回は、ニューヨーク郊外のアップステート訪問記。

映画作品はもとより、音楽の趣味、人間性、生き様すべてを敬慕するジム・ジャームッシュ監督が、マンハッタンとキャッツキルの自宅を行き来する生活を送っているという噂を耳にして以来、キャッツキルには良いイメージを抱いていたことが小旅行先に選んだ理由のひとつ。

そして、キャッツキルまでは車でそう遠くない距離なので、猫2匹も一緒に連れて行けることも重要な条件。わたしの大切な、たった2匹の家族。

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理想の山小屋はこんなのとか、
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こんなかんじとか。小さくて地味だけど、そこそこにスタイリッシュさを兼ね備えた空間。掃除とか、管理しやすそうなのがいい。

訪れたのは、2018年初夏。

猫連れの滞在とあって、ホテルではなくコテージ滞在に初トライ。予定外に早く相方の休暇日程がきまり、間際になってコテージを探しはじめたので、理想に描いていたような緑の生い茂るなかにポツリと建つコテージの空きはなかった。なんとか予約できたのは、Big Indianという地域の、聳える山々のふもとにある広大な敷地内に10メートルおきくらいの間隔で建つ数棟のコテージのうちの1棟だった。

Big Indian到着

マンハッタンから北上しドライブすること3時間弱。コテージのあるBig Indianに到着。

虫が苦手な私は、モダンなつくりで出来るだけ新築のコテージが理想の宿泊施設だったが、探すタイミングが遅かったために、実際に予約がとれたのは最低限に清潔ではあるが古びたコテージ。でもそれはそれで、またひとつ人生の楽しい思い出をつくれてよかった。なによりも相方が一生懸命探してくれた宿泊先。感謝以外の気持ちはない。自ら進んで泊まる場所として選ぶタイプとは真逆なところに泊まるのは、とてもいい経験になった。

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コテージのデッキテラスを探検する勇敢なマイロ隊長

コテージのオーナー住居兼オフィスへ行くと、現れたのはとても感じの良い30代半ばとおぼしき白人男性。色々と説明してくれたが、敷地内のゴミ収集所は夜間は施錠してあるので、ゴミは朝◯時から出すようにとの理由を尋ねると、夜はクマが出没するからだとの返答。震え上がる。

野生のクマに会ってみたい気もしたが、なにしろコテージのドアは薄っぺらな木戸ひとつに、鍵などはあってないような代物。おまけにいくつかある窓の網戸は壊れかけていたり鍵がかからない状態。クマでなくとも簡単に侵入できそうだ。実際に訪ねて来られたら確実に逃げ場はない。おまけにうちにはクマのちょうどいいスナックになりそうなのが2匹いる。

眠る前、ゴミ袋の封をきっちりすぎるほどきっちり結び、空っぽの冷蔵庫にしまっておいた。

わたしたちがオフィスを去り際にオーナーが『あ、そうそう、ルームサービスやモーニングコール、洗濯サービスはないよ!』とジョークを飛ばしていた。わたしたちが乗ってきた車を見てのことであろう。

大抵のアメリカ人はジョークを混じえた会話をする。ジョークはどんな場面においても相手の笑顔を自然に引き出しリラックスさせ、コミュニケーション潤滑油としての機能を発揮する。アメリカ文化の要素で好感を抱くひとつだ。

余談だが、次回は絶対にレンタカーで出かけたい。高級別荘地ハンプトンあたりなら数億円レベルのスポーツカーなどザラに走っているので、相方の某車なども雰囲気に溶け込むことができるのだろうが、ヒッピーの成れの果てのような人々が多く住まうキャッツキルのような地では、無駄に目立つことを学んだ。加えて相方の車はエンジン音も主張する。傍目には、都会からやってきたチャラチャラ感ハンパないカップルに見えたであろう。

初日にいっぱい飲みに立ち寄ったステーキハウスでは、バーテンダーの中年白人女性のフレンドリーとはいえない応対に困惑した。案内係の若い女性や他のスタッフもフレンドリーだったので、おそらく彼女は更年期障害かなにかでたまたま機嫌が悪かったのだろうと思うことにして、頼んであった前菜はTo goに変更してもらいその場をとっとと立ち去った。マンハッタンという、おそらくは世界一リベラルな街の常識に慣れている私たちにとって特に居心地が悪く感ぜられたのかもしれない。

ということで、次回訪問時には目立たない車で出かけたい。こちらがどんな様子であれ、不当な扱いを受けるいわれは毛頭ないが、無駄なストレスは回避できるに越したことはない。

真の暗闇とムーンウォークを同時初体験simon-lemhofer-dQZrIx2bJeM-unsplash (1).jpg

3泊した。あんなにも真っ暗闇の夜は生まれて初めてのことだった。

初日の夜は、あまりの静寂と暗闇に畏怖の念を抱く。デッキテラスに出るのでさえ、暗闇に目が慣れるまでは手足が自分のものではないような心もとなさにギクシャクし、ムーンウォークさながらのスローモーション歩きになってしまったほどの真っ暗闇。宇宙の無重力空間を漂うのは、きっとこんな感覚にちがいない。

夜中に猫たちも一緒に皆でわらわらとデッキテラスへ出てみた。ドア口に灯る薄明かりのほかに唯一地上で確認できる明かりは、一番離れたコテージに滞在中の若者グループのキャンプファイヤーが手のひら程度の大きさに見えるのみ。彼らがギターを弾きながら唄い語りあう楽しげな音がごく小さなボリュームで風にのって途切れ途切れに聞こえてくる。その他のコテージはみな早寝の様子。コテージまわりを少し歩きまわったときに聞こえた、お隣のコテージから鳴り響いていたいびきの音に相方が吹き出していた。

ワイン調達だけで往復1時間!?

地元のマーケットで新鮮な食材を調達したり、レストランを試したいと思い、持参したのはわずかな食料と水だけ。

アルコール類は欲しない環境だろうと想定し持参しなかったが、ステーキハウスのバーで一杯のんだら、もうすこし飲みたくなった。近くのワインショップをグーグルすると、この地域で唯一つのリカーショップがある。コテージから向かうには片道30分かかるので、帰り道にそのまま向かうことにした。相方はアルコール類を一滴も口にしない人なのに、わたしのために慣れない山間の夜道を運転して買い物に付き合ってくれて、ありがたかった。

閉店間際に駆け込んだわたしたちを温かく迎えてくれた陽気な店主。ワインについて色々なことを教わりながら楽しく買い物をし、店を出るころには、先ごろステーキハウスで受けた不当な扱いに戸惑い凍てついてしまった心もすっかり溶け、気分良く帰路につく。ワイン屋のおじちゃん、ありがとう!

コテージ滞在型旅行には、たとえ短期間でも日数分の飲食料品持参必須!

次回はいよいよ、キャッツキル訪問記です。

<本日の1曲>Mogwai – Take Me Somewhere Nice