曇り空と海と砂浜の境目が曖昧になる冬の海岸が好きだ。
そこに灯台があれば心づよい。うっかり遠くまで海岸を歩いても戻るのに心配いらないから。
今回は、わたしの理想の条件を満たす海岸のあるMontauk (モントーク)を紹介します。
はじめて訪れたのは、何年か前の初冬。
冬の海が見たいという私の要望でドライブに出かけた先がニューヨーク州ロングアイランド最東端にあるモントークだった。

マンハッタンから車で3時間弱。距離的にはそれほど遠くないが、大半が別荘地であるロングアイランドは途中から高速道路がなく、片側1車線道路をひたすら低速度で走り続ける以外にオプションがないために3時間弱もかかる。わたしにとってはむしろ快適なドライブだ。高速道路で急に車線変更してくるかもしれない車に怯えながら走るよりも格段いい。モントークは、かつてマンハッタンのSohoあたりにロフトスタジオを構えていたアーティスト達が、家賃高騰により都会を追われて辿り着いた土地柄のせいか、全体的にボヘミアンなゆるい空気なのも気に入っている。
寒風吹きすさぶ人影まばらな海岸を、肌触りのいいセーターやダウンコートを着込み防寒対策万全な出で立ちで黙々と歩く。聞こえてくるのは、繰り返し寄せる波の音とカモメの鳴き声だけ。車や人ごみを気にせず自由に歩くことが出来る至福のひととき。
散歩を終えて冷え切った身体で暖かい飲み物を口にした瞬間、なにもかもに感謝せずにはいられない気持ちになる。
今年は車を冬眠させるタイミングを少し遅らせてもらおう。そして初冬のモントークを再訪したい。
<本日の選曲>Damien Rice – The Blower’s Daughter
ミュージックビデオのところどころで入る映像は、この曲を主題歌に起用した映画『Closer』のシーン。どんな髪型にしても美しいナタリー・ポートマンや、髪がやや薄くなりかけていてもなお甘さ漂うジュード・ロウ、ジュリア・ロバーツと豪華な顔ぶれ。ストーリーはフランス映画的。